害虫

【家庭菜園での害虫解説】コガネムシ被害の特徴から防除まで、成虫・幼虫の対策ガイド

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畑はもちろん、街中でも見かけるコガネムシですが、野菜にとっては害虫扱いされます。特に幼虫は土の中で根に被害を与え、しおれたり枯れたりする原因になります。このような状況に遭遇しないため、また遭遇したらどう対処すべきかをご紹介します。

コガネムシとは?

コガネムシは甲虫類の一種で、多くの異なる種類が存在します。学名で「Mimela splendens」とも呼ばれ、日本語では「黄金虫」と書かれることもあります。その名の通り、成虫の体はしばしば光沢があり、見た目は魅力的ですが、これらの昆虫は実際には多くの種類の植物に害を与える害虫です。

コガネムシの特徴

  • 成虫は体長が1.5cm~2cm程度で、体色は種類によって様々。光沢のある緑色や茶褐色などが一般的です。
  • 幼虫は体長が2cm~3cm程度で、頭部は黒や茶色、胴部は乳白色や黄白色です。
  • 幼虫は主に地中で植物の根を食び、成虫は葉や果実を食害します。

コガネムシの生態、発生時期

コガネムシの成虫は主に5月から8月頃に発生し、この期間に飛来して産卵を始めます。夏が近づくと、成虫は土中に産卵を開始し、孵化した幼虫は土中の有機物や植物の根を食べて成長します。これらの幼虫は土中深くで越冬し、春になると蛹化して再び成虫となります。

特に晩春から夏にかけては、成虫による葉などの食害が多く発生します。一方で、8月頃から秋にかけては幼虫による被害が多くなり、特に植物の根部が攻撃されることが多いです。

コガネムシによる家庭菜園の被害

コガネムシの被害に合いやすい植物

コガネムシは多くの植物に被害を与える害虫であり、特にマメ科の植物や果樹、一部の花や樹木も好む傾向にあります。以下に、コガネムシが好む野菜や植物のカテゴリーと具体的な例をまとめます。

被害に合いやすい植物一覧
根菜類(野菜)サツマイモ、ラッカセイなど
果菜類(野菜)インゲンマメ、サヤインゲン、エダマメ、イチゴ、ブドウなど
葉菜類(野菜)特に被害が出やすいものはありません。
果樹栗(クリ)、葡萄(ブドウ)、柿(カキ)、ブラックベリー
樹木カシ、マサキ、アカシア(ミモザ)、ヤナギ、ロシアンオリーブ、ウバメガシ、イヌマキ
草花ラベンダー、薔薇(バラ)、牡丹(ボタン)

コガネムシによる被害

コガネムシは多種多様であり、成虫と幼虫の両方が野菜を主要な食料としています。成虫は主に新芽や柔らかい葉を食べる一方で、幼虫は土中で未熟な有機物を食べ、成長すると野菜の根まで食害します。

被害が及ぶ範囲は広く、ダイズやインゲンといったマメ科の植物から果樹、イチゴやイモ類、ウリ科の植物まで多岐にわたります。成虫は葉を食べ、その結果として作物の生長が阻害されたり、果物が減少することがあります。一方、幼虫による根の食害は作物の生育不良や枯死を引き起こす可能性があります。

この食害は、根をかじられた植物が養分の吸収ができなくなるため、植物の生育が悪くなります。さらに、傷口から病原菌が侵入しやすくなるため、腐敗が進む可能性も高まります。

特に厄介なのは、幼虫が土中で集団で生息しているため、その被害が外からは気づきにくい点です。また、コガネムシの糞にはフェロモンが含まれており、これが他のコガネムシを引き寄せる恐ろしい効果もあります。そのため、糞は見つけ次第、速やかに除去することが推奨されています。

コガネムシの被害に気付けるポイント

被害を早期に発見するポイントとして、葉に食べられた跡や直径3mm程度の黒い糞が見られた場合、成虫がいる可能性が高いです。また、土がふわふわと盛り上がっている場合は、成虫が土中に潜って産卵している可能性が考えられます。

コガネムシの駆除・対処法

コガネムシの発生を確認した場合、速やかな対策が必要です。以下に、成虫と幼虫それぞれに対する効果的な対処法をまとめます。

成虫の対処方法

成虫のコガネムシは見つけ次第、速やかに補殺することが大切です。特に早朝はコガネムシの動きが鈍くなるので、その時間に庭木や植物の近くで活動している成虫を探し、揺らして落とし捕獲します。また、雨の日は成虫が特に動きが鈍いため、補殺しやすいとされています。

農薬による対策も考えられますが、7~8月が産卵の最盛期なので、この時期に効果的な殺虫剤を散布するとより効果的です。ただし、使用する薬剤は環境に適したものを選び、使用基準を厳守する必要があります。

幼虫の対処方法

幼虫は土を耕す、植物を植える、または種をまく際にしばしば見つかります。見つけた場合には、即座に取り除くことが求められます。特に、未熟な堆肥や有機物が土に混ざっている環境は、コガネムシの産卵に適しているので、土壌の状態にも注意が必要です。土に堆肥などを混ぜる前や植物を植える前には、土壌をよく観察して幼虫の存在を確認しましょう。

捕殺時の注意点

コガネムシは特有の液体を分泌することがあるため、捕獲や補殺の際には軍手をするとよいでしょう。これによって、液体によるニオイや汚れから自分を守ることができます。

コガネムシの予防法

完熟たい肥の使用

コガネムシの予防に効果的な手段として、肥料の選び方が重要です。具体的には、コガネムシが未熟なたい肥や生の緑肥(野菜の残り)に誘引される性質を利用して、これらを土づくりに使用しないようにすることが基本です。

代わりに、完熟したたい肥を用いると良い結果が得られます。種まきや苗の植え付けの3~4週間前までにこの完熟たい肥を土にすき込むことで、コガネムシの発生を大幅に抑制することが可能です。同様に、腐葉土などの有機物も、できるだけ完熟したものを利用することが推奨されています。

未熟な有機物が土壌に存在すると、コガネムシが産卵しやすくなります。このため、未熟な有機肥料の使用は控えるべきであり、また、落ちて発酵したり腐敗した果実や植物残渣なども畑に残さないように注意が必要です。

環境整備

コガネムシの予防には、環境整備が非常に重要です。特に、圃場(田や畑などの農作物を育てる場所)とその周辺環境において、いくつかの重要なポイントがあります。

雑草の除去

まず、圃場の周辺に生えている雑草、特にマメ科の植物は、コガネムシの発生源になる可能性が高いです。そのため、これらの雑草は定期的に刈り取ることが推奨されます。雑草を除去することで、コガネムシだけでなく他の害虫の発生も抑制することができます。

枯れた株の処理

次に、枯れた株やその根元の土中には、コガネムシの幼虫が潜んでいることが多いです。これらの幼虫を掘り起こし、圃場外に持ち出して処分することが必要です。

農薬の散布

さらに、圃場周辺のクリ、マキ、ブドウなどの樹木にコガネムシの成虫が集まる場合もあります。このような状況に遭遇した場合は、農薬を散布して成虫の数を減らすことが効果的です。

マルチング

コガネムシの予防において、マルチングは非常に有効な手段の一つです。この方法は主に成虫と幼虫の両方に対する予防策として働きます。

成虫に対するマルチング

成虫は他所から飛来することも多く、そのため完全な防除は困難です。しかし、熟した果実などに不織布や目合いの細かいビニールネットを袋かけすることで、成虫による食害を防ぐことができます。また、地表面をマルチング材で覆うことで、成虫が卵を産む機会を減らすことができます。特に6月前にこれを行うと効果があります。

幼虫に対するマルチング

地表をマルチング材で覆うことによって、成虫が卵を産む場所が減少し、それによって幼虫の発生を抑制することが可能です。マルチング材としては、不織布やビニールシートが一般的ですが、「ココファイバー」というヤシの実から作られたガーデニング資材も効果的です。この材料は通気性と水はけが良く、マルチングに最適です。

防虫ネットの使用

さらに、野菜などの上に防虫トンネルを覆うことで、成虫の飛来を防ぐことができます。ただし、ネットの中に紛れ込んでいる成虫もいる可能性があるので、定期的にチェックすることが重要です。

以上のように、マルチングはコガネムシの予防に多角的な効果を発揮します。それだけでなく、マルチングは雑草の発生抑制や水分の蒸発防止、地温の調節など、他の多くのメリットもあります。総じて、計画的にマルチングを行うことで、コガネムシの発生と被害を大いに抑制することが可能です。

コンパニオンプランツ

コガネムシの予防には、特定の植物を対抗植物として育てる「コンパニオンプランツ」の手法が有効です。これは、コガネムシが嫌いな植物を選び、それを育てることで、コガネムシを自然に遠ざけるという方法です。

嫌いな植物を選ぶ

コガネムシが嫌いな植物としては、ゼラニウム、ルー、キャットニップ、チャイブ、ミント、シトロネラ、ニンニク、玉ねぎ、ヨモギ、マリーゴールド、スイセンなどがあります。これらの植物から、相性の良いものを選び、コガネムシが発生しやすいエリアに植えることで一定の予防効果が期待できます。

相性を考慮する

既存の植物との相性も大切です。例えば、マリーゴールドは大根やカブとの相性が良いとされています。チャイブはバラとの組み合わせが効果的です。相性を考慮しながら、選んだコンパニオンプランツを植えることが重要です。

おとり作物としてのヒマワリ

コガネムシはヒマワリを好むため、おとり作物としてこれを植えるのも一つの戦略です。ヒマワリがコガネムシを引き付けることで、他の作物への被害を最小限に抑えることができます。さらに、ヒマワリは強風から野菜を保護したり、土壌を肥沃にしたりといった追加の利点もあります。

以上のように、コンパニオンプランツを活用することで、化学物質を使わずに自然な方法でコガネムシの予防が可能です。それだけでなく、選んだ植物が他の面でも効果を発揮する場合が多く、持続可能な農業にも貢献します。

農薬(殺虫剤)

コガネムシの防除に農薬(殺虫剤)を用いる場合は、成虫と幼虫に対するそれぞれの戦略があります。

成虫対策: 産卵最盛期に散布

成虫の産卵最盛期は7~8月です。この時期に効果の高い薬剤を散布すると、成虫の防除に効果的です。生産者の場合は、地域の防除指導機関やJA(農協)が推奨する薬剤を選定し、使用基準に沿って散布します。家庭菜園での防除を考える方は、対象とする害虫をしっかり把握した上で、その作物に適した薬剤を選びます。

幼虫対策: 浸透移行性殺虫剤

種まきや植え付けの際には、浸透移行性(しんとういこうせい)殺虫剤を土に混ぜ込むことで、コガネムシの幼虫の発生を防ぐことが可能です。この種の殺虫剤は、植物の根や葉から有効成分が吸収され、植物全体に行き渡るので、コガネムシを寄せつけません。

その他の薬剤: 即効性のあるスミチオン乳剤

水で薄めて散布する即効性のあるスミチオン乳剤も効果的です。この薬剤は、コガネムシの幼虫以外にも、アブラムシアオムシ、アザミウマ、カメムシ、ケムシといった多くの害虫にも効果があります。

使用上の注意点

殺虫剤を散布する際は、マスクを着用することが推奨されます。ペットを飼っている場合も、薬剤が吸引されたり口に入ったりしないよう注意が必要です。

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ムギ
ムギ
兼業農業ビジネスマン
実家の畑を使って兼業農家を始めた30代の会社員です。
野菜の育て方や、週1の農作業についての投稿をしています。
野菜を作る楽しみを届けられるように頑張ります。
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