家庭菜園のネギ育て方と病気・害虫対策の詳細解説
薬味や汁の実、冬の鍋物料理に欠かせないネギは、日本の食卓において重要な役割を果たしています。特有の辛みと風味、そして刻むと目にしみる硫化アリルは、消化液の分泌を助け、便秘や整腸作用もあります。栄養価においても、特に葉ネギはミネラル、カロテン、ビタミンC・Bを豊富に含むと言われています。この記事では、家庭菜園でのネギの栽培方法を中心に詳しく解説していきます。
ネギの基礎情報
ネギについて、こちらを参考にしてみてください。
※品種により若干数値が変わりますので、あくまでご参考程度に。
栽培の難易度 | ★2(白ネギは基本的なケアを要しますが、初心者の方にも挑戦しやすい作物です。) |
科名 | ユリ科 |
原産地 | 中国 |
草丈 | 約30cm~60cm |
適した栽培環境 | 湿度を保った、排水の良い土壌 |
日当たり | 良好な日当たりが必要。 |
土壌酸度 | pH 6〜7.5(酸性から中性) |
株間 | 10cm~15cm |
畝幅 | 30cm~40cm |
畝高 | 10cm~15cm |
発芽適温 | 15℃~25℃ |
生育適温 | 15℃~25℃。真夏の高温を避けると良い。 |
種まき時期 | 春または夏 |
発芽日数 | 5日~10日 |
苗植え付け時期 | 種まきから1~2ヶ月後 |
収穫時期 | 植え付けから3~5ヶ月後 |
コンパニオンプランツに 向いている野菜 | にんじんやトマト。これらの組み合わせは害虫を遠ざける働きがあると言われています。 |
栽培のポイント
- 発芽適温:ネギの種が芽を出す最適な温度は15℃~25℃です。この温度帯を保つことで種まきから約5~10日で元気な芽が出てきます。
- 生育適温::ネギは比較的温和な気温を好む植物で、特に15℃~25℃が理想的な生育温度です。低温にも比較的強いですが、真夏の猛暑は避けるのが理想的です。高温になると成長が遅くなることがあるので注意が必要です。猛暑や乾燥に注意し、適切な水やりや日陰の提供を心掛けることが大切です。
- 栽培期間:種を蒔いてから収穫まで約3~5ヶ月です。春や夏に種まきや苗の植え付けを行い、夏から秋にかけてが収穫のピークとなります。
栽培手順
1.畑の準備
ネギの栽培において、土壌の下ごしらえは非常に重要です。根深ネギと葉ネギの育苗畑では、種まきの2週間以上前には苦土石灰を適量施し、土を良く耕します。さらに1週間前には堆肥と化成肥料を加え、再び土を耕します。対照的に、根深ネギの定植畑では、耕すことなく、1週間前のみ苦土石灰を施すことをおすすめします。
日当たりが良い場所は、ネギの生育に最適です。そこでの土の処理として、種まきの2〜3週間前に1㎡あたり苦土石灰100gを均一にまき、土をしっかりと耕すよう心掛けてください。また、種まきの1週間前には、畝の幅を60cmに設定し、その中央部に深さ20〜30cmの溝を掘ります。この溝に1㎡あたり堆肥2kgと緩効性化成肥料100gを施し、その上に高さ10cmの畝を作成します。
ネギは肥料焼けを起こしやすいので、土壌に施す元肥は控えめにし、土の表面は平らに整えるようにしましょう。
2.種まき
ネギの種まきには、畝の中央に15cm間隔でまき溝を作り、その中に種を1〜2cmの間隔または5mmの間隔で播きます。その後、3〜5mmの厚さで土をかぶせ、手でしっかりと押さえて鎮圧します。しっかりと水やりをし、土の乾燥を防ぐためにもみ殻を散布するか、不織布をかけておきましょう。
苗が成長したら、草丈が6~7cmの時に1.5cm間隔、10cmの時に3cm間隔で間引きします。また、1カ月ごとに1平方メートル当たりの化成肥料を50g程度(おおよそ1握り)散布し、軽く土を耕します。
水やりの際には、種が流れないように注意して、高い位置からはす口をつけたジョウロで水をまきましょう。
3.管理・追肥
成長に応じて、ネギの土寄せと追肥は計4回行われます。植え付けから始めて、毎月追肥と土寄せを行い、収穫の30〜40日前に最後の土寄せ(この時追肥は不要)をします。ネギを美味しく成長させるためには、土寄せをしっかりと行い、葉鞘部を白く長くさせることがキーです。
土寄せの際は、ネギの反対側の畝の肩に追肥を施し、溝に土を入れることで分けつ部(葉が分岐するところ)の下まで土を寄せますが、分けつ部の4〜5cm下までに留めることが重要です。これを怠るとネギの生育が悪くなったり、腐敗のリスクが高まります。
土をかけてからネギが完全に軟白するまで、約30〜40日かかるので、最後の土寄せは収穫の前に計算して行います。ネギは雑草に敏感なので、定期的に除草する必要があります。
また、ネギは低温にさらされると「とう立ち」と呼ばれる現象が起こり、その後の気温上昇と日長の増加でネギ坊主が伸びて花が咲くことがあります。秋植えや春植えの際には、すでに花芽を持つ苗がある場合、ネギ坊主が伸びてくるのを見かけたら速やかに摘むことが推奨されます。
地植えのネギは自然の水分で十分に育つことが多いですが、乾燥が進むと適宜水やりが必要になります。そして、月に1回緩効性化成肥料を1㎡当たり約50g(プランター栽培の場合は大さじ1程度)を施し、軽く土に混ぜ込むことがおすすめです。ただし、分けつ部を土で覆わないよう注意が必要です。
4.収穫
収穫の目安は、最後の土寄せから約1ヶ月後で、太く成長したネギから優先的に収穫します。白ネギは寒さを経験させることで甘みが増し、より美味しくなります。収穫する際には、盛り土の部分を崩してから、スコップで土を掘り、ネギの株元を手で握って引き抜くことが推奨されます。しかし、無理に抜くとネギが折れる可能性があるので注意が必要です。根深ネギの場合、白い部分が長くなったら、畝の端から土を崩し、必要な分だけ収穫します。一方、葉ネギは草丈が50cmに達した時に収穫することができますが、株全体を収穫する代わりに、地上部だけを刈り取ると、その後も新芽を続けて収穫することが可能です。
育てやすい品種
栽培するのにオススメの品種は下記の通りです。
加賀一本太ネギ
- 凍結に強く、病害虫の被害が少ない。
- 肉質はやわらかく甘い。鍋料理に適しています。
下仁田ネギ
- 短く白い部分と濃緑の幅広い葉が特徴。
- 加熱すると甘みが増し、とろっとした食感が楽しめる。鍋料理に良い。
伯州一本太葱
- とろみが強く、口当たりが良い。
- 白い部分はやわらかく、収穫時期には色がはっきり分かれる。
ネギ栽培で注意すべき病気
さび病は5~6月と10~12月、べと病は残暑の頃に特に発生しやすく、これらの病気には薬剤を散布して予防・防除する必要があります。具体的なネギの病気とその特徴は次の通りです。
- 黒斑病:葉に淡褐色〜黒色の大きな楕円形の斑点が現れる。
- さび病:葉の表面にオレンジ色の小さな楕円形斑点が多数形成され、その後斑点が破れてオレンジ色の粉状の胞子が飛散する。
- べと病:葉に黄白色のぼやけた斑点ができ、その上に灰白色の薄いカビが生じる。
ネギ栽培で注意すべき害虫
ネギの栽培において、害虫は大きな問題となることがあります。以下はネギに特に発生しやすい害虫と、その特徴についてのまとめです。
- ネギアザミウマ:この1〜2mmの小さな虫やその幼虫はネギの葉を吸って害を与え、被害を受けた葉はカスリ状に色が抜けるようになります。
- アブラムシ:体長1.8〜2mmの黒色の小虫がネギの葉に集まり、吸汁することで害を与えます。特にこの害虫はウイルス病を伝える可能性があるため、特別な注意が必要です。
- アザミウマ:幼虫はネギの葉や果実を吸汁し、成虫になると再度葉や果実に被害を与えます。多くの種類の植物に発生するため、異なる作物を同じ場所で育てる場合や雑草を放置する場所では特に注意が必要です。
- ネギコガ:この1cm程度の蛾の幼虫はネギの葉に潜り込み、葉を食害します。葉には白い筋のような跡が残ります。
- ナメクジ:湿気を好むこの害虫は、土の中などに潜みながら、ネギの柔らかい葉を食べます。
- ネギハモグリバエ:乳白色の幼虫がネギの葉の中で食害を行い、葉の表面には絵のような白い筋が残ります。
- ヨトウムシ:体長3〜4cmの淡緑から褐色の幼虫が夜間にネギの葉を食べます。特にシロイチモジヨトウやハスモンヨトウが知られています。
ネギ栽培の病気・害虫対策
病気の対策
白ネギを栽培する際、特に「うどんこ病」と「褐斑病」に注意が必要です。うどんこ病に対する対策としては、専用の薬剤の使用や、風通しを良くするための適切な栽培間隔の確保が効果的です。また、褐斑病に対しては、感染部分を早めに取り除くことや、専用の薬剤の使用が推奨されます。
害虫の対策
主な害虫として「アブラムシ」「タマネギミノムシ」「ネギガ」が考えられます。アブラムシ対策として、てんとう虫などの天敵を増やす手法や天然農薬の利用が有効です。タマネギミノムシやネギガに対しては、早めの発見と取り除きや、トラップの設置、天然農薬の使用が効果的です。
一般的に、健康な土壌作りや、適切な植付け間隔の確保、有機質を豊富に含む土の使用などの予防策を講じることで、病気や害虫からの被害を最小限に抑えることができます。