土作り

家庭菜園初心者必見!苦土石灰、消石灰、有機石灰の違いと最適な使い方

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家庭菜園を始める際、土壌の調整は必須の工程です。特に「石灰」という名前を耳にする機会が多く、その中でも「苦土石灰」「消石灰」「有機石灰」といった種類が存在しますが、正確にはどれをどのように使用すれば良いのでしょうか?石灰の使用は、酸性に傾いた土を中和し、野菜が元気に成長する環境を作るための重要なステップ。しかし、そのまま適当に撒けば良いというわけではありません。今回の記事では、これらの石灰の特徴や最適な使用方法について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

家庭菜園における石灰とは?

石灰、特に石灰窒素は、石灰石を原料とした農業資材であり、カーバイドに高温で窒素を吸収化合させて作られます。この石灰窒素には、土壌改良、農薬、肥料の3つの効果があり、120年以上の長い歴史があります。土中での変化によって、農薬成分が肥料成分へ自然に変わるため、コスト削減や農作業の効率化に寄与しています。加えて、その特性から環境への悪影響が少ないとされる。

石灰窒素の主成分はカルシウムシアナミドであり、土に混ぜると数日から10日で植物が利用可能な形に分解される。この過程で生じる物質が、酸度調整や農薬の効果などを持つ。

また、石灰肥料とは、石灰岩を主成分とする肥料で、この石灰岩は炭酸カルシウムを50%以上含む堆積岩。石灰肥料はアルカリ性を持ち、土の酸性度を調整する目的で使用される。主要な種類としては、苦土石灰、消石灰、有機石灰などが挙げられる。

石灰の種類

家庭菜園でよく使われる石灰は主に3つの種類があり、それぞれ異なる特徴と使用法を持っています。以下に、各石灰の特徴をまとめます。

  1. 消石灰
    • 成分: 水酸化カルシウム。石灰石と水の化学反応によって作られる。
    • 特徴: アルカリ度が高く、60%前後のアルカリ分を含む。強い中和作用と熱反応を持つ。殺菌力が高く、土の消毒効果や極度の酸性度の土を速やかに中和する能力がある。
    • 注意: 土に混ぜた後、熱を持つため、苗の植え付けは2週間待つ必要がある。また、肥料は消石灰を撒いてから1週間後に使用するのが適している。
  2. 苦土石灰
    • 成分: カルシウムとマグネシウム(苦土)を主成分とする。
    • 特徴: アルカリ度は消石灰よりも低いが、55%前後のアルカリ分を含む。植物の栄養となるマグネシウムを持ち、土の中和と栄養補給を同時に行うことが可能。
    • 注意: 土の中和には極度に酸性の土には向かない。植え付けの2週間前に土に混ぜるのが一般的。肥料との化学反応の可能性があるため、分けて使用する。
  3. 有機石灰
    • 成分: 卵の殻や貝殻を主材料とする。アルカリ度が45%前後。
    • 特徴: アルカリ度が非常に低く、穏やかな土壌の変化をもたらす。極端に酸性の強い土の中和には適さない。有機肥料の性質も持つため、土の中和と同時に栄養補給も可能。
    • 注意: 熱を持たないため、撒いた後すぐに植え付けや種を撒くことができる。化学反応の心配が少ないため、肥料と同時に使用することも可能。

これらの石灰は、土壌の状態や目的に応じて選ぶことが大切です。

代表的な石灰「消石灰」と「苦土石灰」の使い分け

消石灰と苦土石灰は、共に土壌改良のために使用される資材ですが、その特性と利用目的には違いがあります。

消石灰はアルカリ性が非常に強いのが特徴で、苦土石灰の半分程度の少量で土の酸性度を中和することができます。また、消毒効果もありますので、土壌の病害を予防する際にも役立ちます。

一方、苦土石灰は消石灰に比べて消毒や中和の効果がやや劣りますが、肥料成分としてのマグネシウムを含んでいます。このため、野菜の苗や種を植え付ける直前の土壌改良時には苦土石灰が好まれます。特に、前年に育てた野菜の葉が黄色く変色している場合は、土壌中のマグネシウムが不足している可能性が高いです。そのような状況下では、苦土石灰の使用が推奨されます。

石灰にはいろいろな形状がある

  • 粒状: 飛散しにくく、機械での散布に適している。土壌で迅速に分解される。
  • 粉状: 均一に散布しやすく、水に溶かして使用可能。
  • 防散: 風で飛び散りにくくした粉状。主に畜糞の堆肥化処理に用いられる。

家庭菜園における石灰の効果

石灰窒素は家庭菜園での土壌改良の一環として、多岐にわたる役割を果たします。

まず、石灰窒素は土壌の改良剤として働き、有機物の腐熟を促進し、土壌の地力を高めるのに役立ちます。これにより、稲わらや野菜の残さ、さらには畜ふんなどの有機物の腐熟をサポートします。石灰窒素を土に混ぜると、有機物の繊維が柔らかくなり、土壌の通気性や水の排出が向上します。

石灰窒素はまた、農薬としての役割も果たします。特に石灰窒素の分解過程で生成される成分シアナミドは、殺菌・殺虫・除草に効果があり、農薬としての効果が期待できます。さらに、夏季にハウス栽培での土壌消毒をする際に、太陽熱を利用した消毒法、すなわち「太陽熱・石灰窒素法」にも使われることがあります。

その後、石灰窒素は肥料としての働きも持っています。石灰窒素は、農薬としての効果が終わると、窒素と石灰を含む肥料に変わります。これにより、土壌のカルシウムや窒素が長期間にわたって供給され、野菜の生育をサポートします。

家庭菜園における石灰の主な目的は、土の酸性度を調整することと、土壌の消毒や栄養補給を行うことです。特に日本の土壌は酸性傾向が強く、酸性雨の影響も受けやすいため、石灰の施用は不可欠です。石灰を土に混ぜることで、酸性の土壌を中和し、野菜の根が栄養分をうまく吸収できるようになります。また、カルシウムは野菜の細胞組織を強化するとともに、根の成長を促進するため、石灰は土壌中のカルシウムを補給する必要がある資材として家庭菜園に欠かせません。

家庭菜園における石灰の使い方

石灰は土壌の酸度調整や植物の健康維持のために用いられる重要な材料です。正しい使用方法を理解することで、より良い作物の育成が期待できます。

施肥のタイミング

  • 石灰窒素散布後、直ちに種まき・植え付けをすると薬害のリスクがある。
  • 種まき・植え付けの7〜10日前に散布することを推奨。
  • 冷たい地域や冬の場合は、2〜3週間前に施用することが望ましい。

施肥の時期

  • 土が適度に乾燥しており、温度が低い春や秋が最適。
  • 極端な乾燥時や土が湿った時期は避ける。

石灰の施す手順

  1. 耕作: 30cm深さまで耕し、石やゴミを取り除く。
  2. 土壌改良: 通気性・排水性・保肥性を向上させる材料を混ぜる。
  3. 酸度計測: pH測定器で土壌の酸度を確認。
  4. 石灰散布: 必要量の石灰を均一に散布し、混ぜ込む。
  5. 元肥混ぜ: 石灰散布後2週間を経た後、牛糞などの肥料を混ぜる。
  6. 植え付け: 元肥を混ぜた後、1週間経ってから植え付ける。

石灰の使用例

農薬として使う場合

種類10a当たりのキロ数
根こぶ病対策(ハクサイキャベツなど)100〜200kg
センチュウ類対策(野菜類・豆類・イモ類など)50〜100kg
スクミリンゴガイ、ザリガニ対策(水稲など)20〜30kg
ユリミミズ対策(水稲など)40〜60kg
水田一年生雑草対策(水稲など)50〜70kg

肥料として使う場合

植物の種類10a当たりのキロ数
葉菜類60〜100kg
根菜類40〜60kg
果菜類60〜100kg
豆類10〜30kg
茶・葉たばこ40〜80kg

pHの調整に使う場合

土のpH値が6.0を下回った場合、石灰を使用することで土の酸性を中和することが推奨されます。pH7.0は土の中性を示しており、これより低い数値は酸性、高い数値はアルカリ性を示しています。具体的に土のpH値を1.0アルカリ性に近づける場合、1㎡当たり苦土石灰を100g、消石灰を60g使用すると効果的です。日本の土壌は一般的に酸性傾向にありますので、1㎡あたり手のひら2握り程度の苦土石灰をまんべんなく撒き、よく土に混ぜ込むことで、適切な酸度に調整することができます。

石灰の使用上の注意点

石灰は農業や家庭菜園において多くの利点を持っていますが、使用に際しては適切な知識と注意が必要です。

  1. 適切なタイミング:石灰窒素を施用した後は、播種や植え付けを行う前に2〜3週間待つことが重要です。シアナミドが尿素やアンモニアに分解される前に作業を行うと、植物の生理障害を引き起こすリスクがあります。
  2. 安全な取り扱い:施用時には、シアナミドの毒性を避けるために手袋、作業着、マスクを着用し、直接の肌への接触や吸引を避けることが必要です。特に石灰窒素を吸引するとアルコールへの耐性が低下するため、施用した日は飲酒を避けることを推奨します。
  3. 適切な保管:石灰窒素は吸湿性が強く、湿気によりその成分や効果が変わってしまう可能性があるので、乾燥した場所での密封保管が必要です。
  4. 適量の使用:石灰の過度な使用や連用は植物の発芽や生育に障害を及ぼす原因となるため、適量を守ることが大切です。
  5. 石灰と堆肥の併用:石灰と堆肥を同時に施用すると、地中の窒素と反応してガスの発生や窒素不足を引き起こす可能性があります。そのため、石灰を施用した後は最低でも2週間経ってから堆肥を混ぜるようにします。
  6. 撒き過ぎを避ける:土壌が過度にアルカリ性になると、土の固まりやヨウ素欠乏などの問題を引き起こすため、石灰の量を調整し、必要に応じて硫安や硫酸カリを使用して中和します。
  7. 適切な服装:石灰を撒く際には、肌を保護するために長袖、長ズボン、軍手を着用し、目の保護のためにメガネやゴーグルを使用します。特に「生石灰」は、水と混ざると高温になるため取り扱いには注意が必要です。

石灰の効果的な使用には、これらの注意点を理解し、実践することが必要です。安全かつ効果的な土作りのために、適切な知識を持って活用しましょう。

最後に

いかがだったでしょうか。家庭菜園を始める方にとっては、必須の商品です。園芸店やホームセンター、またはネットで安価で購入できます。ぜひ、常備しておきましょう!

ABOUT ME
ムギ
ムギ
兼業農業ビジネスマン
実家の畑を使って兼業農家を始めた30代の会社員です。
野菜の育て方や、週1の農作業についての投稿をしています。
野菜を作る楽しみを届けられるように頑張ります。
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