野菜の育て方

家庭菜園でのほうれん草栽培ガイド:病気と害虫対策の詳細解説

ホウレン草1
keisukeduo

ほうれん草は、私たちの食卓に欠かせない健康野菜のひとつです。鮮やかな緑色の葉は、ビタミンやミネラルを豊富に含んでおり、さまざまな料理に活用されるだけでなく、生のままサラダとしても楽しむことができます。しかし、市販されているほうれん草と自宅で育てたものとでは、その味や食感に大きな違いがあります。自家栽培することで、新鮮で、より風味豊かなほうれん草を手軽に味わうことができます。この記事では、ほうれん草の栽培方法や注意すべき病気について詳しく解説していきます。初心者の方でも安心して栽培を始められるよう、基本的な知識から実践的なヒントまでをお伝えします。

ほうれん草の基礎情報

ほうれん草(ホウレンソウ)について、こちらを参考にしてみてください。
※品種により若干数値が変わりますので、あくまでご参考程度に。

栽培の難易度★2(初心者でも栽培が容易で、春と秋の2回、収穫が楽しめます)
科名アカザ科
原産地西アジア
草丈約20cm~30cm
連作障害あり。(2年以上同じ場所での連作は避けると良い)
適した栽培環境日当たりの良い、肥沃な土地。
日当たり半日以上の日当たりが好ましい。
土壌酸度pH 6.5~7.5(やや酸性から中性)
株間約10cm~15cm
畝幅約20cm~30cm
畝高約10cm~15cm
発芽適温15°C~20°C
生育適温10°C~20°C
種まき時期春の場合は2月から4月、秋の場合は8月から10月。
発芽日数5日~10日
苗植え付け時期種まきから約2週間後。
収穫時期春大根の場合は種まきから約50日~60日後、秋大根の場合は種まきから約60日~120日後。
コンパニオンプランツに
向いている野菜
春の場合は種まきから約40日~50日後、秋の場合は種まきから約50日~60日後。 コンパニオンプランツに向いている野菜:ストロベリー、レタス、ラディッシュなど。ほうれん草は他の植物との相性が良く、特に畝間を利用しての併作が効果的です。

栽培のポイント

  • 発芽適温:ほうれん草の種が発芽する最適な温度は15℃~20℃です。この温度範囲を保つことで、種まきから約5~10日で健やかな芽が出てきます。
  • 生育適温:ほうれん草は涼しい気温を好む植物であり、10℃~20℃が最も理想的な生育温度となります。高温になると葉が硬くなったり、発育が悪くなることがあるため、猛暑期は特に注意が必要です。乾燥にも弱いため、適切な水やりや日陰の提供を心掛けることが重要です。
  • 栽培期間:種を蒔いてから収穫まで、春の場合は約40日~50日、秋の場合は約50日~60日となります。涼しい気温を好むほうれん草は、春や秋に栽培が最も適しており、それぞれの時期に収穫のピークを迎えることができます。

栽培手順

1.土作り

ほうれん草は土壌の酸度に敏感な野菜の一つです。適切な土作りを行うことで、健康的に育ち、美味しい収穫を期待することができます。

1. pHの調整

ほうれん草は酸性の土に弱く、適切なpHの環境下でのみ良好に生育します。理想的なpHは6.5〜7.0の範囲です。土壌の酸度がこの範囲外の場合、ほうれん草の生育は不均一となり、また、健康に育たない恐れがあります。

2. 苦土石灰の散布

土壌が酸性の場合、種まきの2週間以上前に苦土石灰を全面に散布し、しっかりと深く耕しましょう。これにより、土壌のpHを調整し、ほうれん草が生育しやすい環境を作り出します。

3. 堆肥と元肥の施肥

植え付けの1週間前に、堆肥や元肥を土壌に施し、よく耕しておきます。ただし、有機肥料を使用する際は注意が必要です。種まき直前に有機肥料を施すと、タネバエの発生を引き起こす恐れがあるため、最低でも2週間以上前に施肥することを推奨します。

4. 畝の作成

土作りの後、種まきまでの間に畝を整えます。畝の幅は60~90cm程度にすると、ほうれん草の栽培に適しています。

土作りのコツ
  • 土作りは植え付けの2週間前までに完了させること。
  • 元肥の施肥は植え付けの1週間前を目安に。
  • 有機肥料はタネバエを引き寄せないよう、適切なタイミングで施すことが重要。


▼土作りの記事はこちらをチェック

成功する野菜作りの基盤:土づくりの全てを解説

2.種まき

1. 種まきの時期

ほうれん草は春と秋、年に2回種まきが可能です。具体的には、春は3月中旬〜4月中旬、秋は9月上旬〜10月下旬が最適な時期とされています。特に初心者には秋まきがおすすめで、冷涼な環境下での生育と寒さによる甘みの増加が期待できます。

2. 種まき前の芽出し

ほうれん草の種は発芽しにくいのが特徴です。そのため、事前に芽出しを行うことが推奨されます。芽出しは、種を湿った布で包み、その後ポリ袋に入れて冷蔵庫で2〜3日保管することで行えます。発芽の兆しが見えたら、その種を使用して種まきします。

3. 種の加工に関する注意

加工されていないほうれん草の種は、必ず種まき前に水に浸し、発根させることが必要です。一方で、エボプライム加工された種子の場合、新鮮ならばすぐに種まきが可能ですが、古い場合は一晩水に浸すことが推奨されます。

4. 種まきの方法

ほうれん草は移植を嫌う性質があるため、種は直接畑に播くことがおすすめです。まず、条間15cmの間隔でまき溝を作り、その後2〜3cmの間隔で種を播く。播き終えたら、土で覆い、しっかりと鎮圧した後、豊富な水を与えます。

5. 真冬の種まき

真冬の種まきを行う際には、レジ袋を被せることで発芽率の向上が期待できます。発芽後は通常の管理方法で十分に育てることができます。

種まきの際には、適切な時期や種の加工状態に注意を払い、さらには事前の芽出しを忘れずに行うことで、美味しいほうれん草を栽培することができます。

6.防寒対策

ほうれん草は寒さには強いものの、低温になると発芽率が下がることがある。特に11月以降に種を蒔く遅まきの際には、トンネルや不織布を使って地面を保温することで、発芽しやすくなります。

3.管理(間引き・追肥・土寄せ・水やり)

間引き

ほうれん草の間引きは株の成長を見極めながら進めていきます。本葉1〜2枚の時に指2本間隔で、本葉3〜4枚の時には指3本間隔で間引きを行います。この間引きを適切に行うことで、養分と水分の競争を避け、肉厚で甘味のある茎葉を収穫することができます。間引き菜として利用できる小さな苗は、サラダや汁物の具として美味しく食べられます。

追肥(肥料)

2回目の間引き後に追肥を施します。化成肥料(N:P:K=8:8:8)を1平方メートル当たり1握り(約50g)を条間に散布します。肥料が直接葉に触れないように注意しながら施します。

土寄せ

ほうれん草の根元の用土が流れ出る場合や、発芽直後の苗が倒れやすい場合は、株元に土寄せを行います。これにより、根をしっかりと保護し、安定した成長を促進します。

水やり

ほうれん草は乾燥を嫌うため、水やりは慎重に行う必要があります。特に晴天の日には忘れずに水やりをし、プランター栽培の場合は週に1度液肥を与えることで良好な生育をサポートします。しかし、午前中のみ水やりを行い、夜間は葉が乾いた状態を保つことが重要です。露地では1株あたり約1~1.5Lの水を与え、梅雨や秋雨の時期などの多湿時には水やりを控えるよう心がけましょう。

これらの管理を適切に行うことで、健康で美味しいほうれん草の栽培を成功させることができます。

4.収穫

収穫のタイミング

ほうれん草は種まきから約2ヶ月後に収穫の適期を迎えます。具体的には、春まきの場合は30日~45日、秋まきの場合は35日~55日後が収穫の最適時期となります。収穫の目安としては、草丈が20~25cmに達した時点です。この草丈を超えると、茎葉が固くなり、苦みも増してしまうので注意が必要です。

収穫方法

ほうれん草の葉はデリケートで折れやすいため、収穫時には株全体を持ち上げ、株元の土を押さえながら引き抜くことが推奨されます。また、ハサミやナイフを使って根元を切り取る方法も良いでしょう。大きく育った株から順に収穫を進めます。夏や春の栽培期間中にトウ立ちする株が現れる場合は、トウ立ちする前の早めの収穫を心がけましょう。

霜とほうれん草

ほうれん草は寒さに非常に強い作物で、霜がかかることによって繊維が柔らかくなり、さらに甘味が増す特性を持っています。このため、霜が降った後のほうれん草は特に美味とされます。寒冷地域や厳冬期には、寒冷紗や不織布を使用して簡易トンネルを作ることで、ほうれん草の生育をサポートし、葉先が傷むのを防ぐことができます。

収穫時期や方法を適切に選ぶことで、ほうれん草のおいしさを最大限に引き出すことができます。特に霜によって味が引き立つ点は、ほうれん草栽培の醍醐味と言えるでしょう。

ほうれん草の種はどこで買えるの?

ほうれん草の種を手に入れたい場合、まずは近くの園芸店やホームセンターを訪れると良いでしょう。これらの店舗では、多くの野菜の種が取り扱われており、ほうれん草の種も一般的に置いてあります。また、地域の農協、通称JA(日本農業協同組合)でも、農家向けの種が購入できることがあります。品種のバリエーションが豊富に取り揃えられていることが特徴です。オンラインショッピングを利用することも考えられます。Amazonや楽天などの大手ショッピングサイトでは、さまざまな品種や産地のほうれん草の種が取り扱われています。加えて、専門的な種苗店なども存在し、特定の品種や有機栽培用の種など、特色のある品揃えを提供している場合があります。どこで購入するにしても、品種や耐病性、栽培の適期などをしっかり確認し、自分の栽培環境や目的に合わせて選ぶことが大切です。

ほうれん草栽培で注意すべき病気

ほうれん草には、さまざまな病気のリスクがあります。下記の病気に注意をしましょう。

べと病

  • 特徴: 葉に淡黄色から黄褐色の病斑が現れ、カビが生じる。
  • 防除方法: 密植や過湿を避け、土壌からの感染対策として敷きワラやビニールマルチの利用。

モザイク病

  • 特徴: アブラムシが媒介し、葉にモザイク状の模様が現れる。葉が萎縮してしまうことも。
  • 防除方法: アブラムシの飛来を防ぐためのマルチやトンネルを使用。感染した葉は除去し、消毒すること。

萎凋病

  • 特徴: 葉が萎れて枯死。根が白いカビで覆われる。
  • 防除方法: 土を他の場所に持ち込まず、太陽熱消毒や消毒済みの種子の使用。

炭疽病

  • 特徴: 葉に褐色から灰白色の大きな病斑が現れる。
  • 防除方法: 風通しを保ち、薬剤の散布。

灰色カビ病

  • 特徴: 葉や茎に灰白色から褐色のカビが生じる。
  • 防除方法: 風通しの良い場所での栽培や換気。

斑点病

特徴: 葉に灰白色から黄褐色の小さな斑点が多数発生。対策: 厚まきを避け、適切な施肥管理。感染株の早期除去や、雨による土のはね上げ対策。

立枯病

  • 特徴: 葉柄や茎の腐敗や葉の萎死。
  • 防除方法: 土壌の水はけを保つ、連作を避ける。

ほうれん草の栽培には、これらの病気に十分な注意と対策が必要です。適切な管理と早期の対応で、健康なほうれん草を収穫することができます。

ほうれん草栽培で注意すべき害虫

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 1de889849872ad01245054a87f9ae463.png

アブラムシ

アブラムシは1mm~2mmの小さな虫で、年間を通して発生します。葉からの汁を吸うため、虫食いの穴は見られませんが、葉が萎縮してしまいます。特にモザイク病を媒介する能力があるため、防除は必須です。

防除方法:防虫ネットを使用して飛来を防ぐことが有効です。発生してしまった場合は、テープや歯ブラシでの捕殺や、葉を処分する方法がありますが、大量発生時には薬剤の散布を検討しましょう。

ネキリムシ

ネキリムシは地際部の茎や葉を食害する害虫です。夜行性のため、昼は土中に隠れていますが、夜に食害を行うので注意が必要です。

防除方法:寒冷紗や防虫ネットを使用して、飛来や産卵を防止します。また、圃場の周囲の雑草はきちんと抜き取ることで、産卵場所を減少させることができます。

アザミウマ

アザミウマは1mm程度の虫で、特に夏に多く発生します。葉の汁を吸うことで、葉に白い斑点が出現したり、病害の媒介も行います。

防除方法:防虫ネットの使用や、アザミウマが発生しやすい他の野菜との距離をとることで予防します。発生した場合は薬剤の散布やマルチの利用が効果的です。また、栽培終了後の蒸し込み処理で拡散を防ぐことが重要です。

ヨトウムシ(夜盗虫)

ヨトウムシは昼間は土中に隠れる夜行性の害虫です。様々な野菜に発生するため、近隣の畑でも発生している場合は特に警戒が必要です。

対処方法:畑をよく耕し、早期段階での駆除が効果的です。ベタがけやトンネルでの苗の保護や、葉の裏側のチェックも必要です。

ABOUT ME
ムギ
ムギ
兼業農業ビジネスマン
実家の畑を使って兼業農家を始めた30代の会社員です。
野菜の育て方や、週1の農作業についての投稿をしています。
野菜を作る楽しみを届けられるように頑張ります。
記事URLをコピーしました